第1話 再会

 
 何があっても受け止めてくれるこの町の片隅で、小さないざこざが起こっていた。
「テメェ、どのツラ下げて……!」
「どちら様なのか名乗ってください、なぜ喧嘩腰なんですか」
 どこまでも冷静に答える幻騎士にγの怒りは頂点に達しかけていた。それを宥める太猿たちだって困惑している。未来の最強の剣士が、なぜこんなところでパンが入った紙袋を片手に立っていたのか。
 とうとう腕を振り上げたγに、幻騎士は仕方ないとばかりに身構える。
 そんな二人を制する、暢気な声があった。
「γクン、なにしてるの?」
 途端、苛立ちの矛先が切り替わる。未来でγの守りたかった何もかもをぶち壊したのは、そもそも白蘭で──
「ににさま! 白蘭の友達と知り合いだったのだ?」
 幼気な子どもの声で我に帰る。
 自分と幻騎士の間に割って入るように、これまた小さな幻騎士が駆け寄った。
「知り合いではないよ、喧嘩を売られただけだから。空幻、ジュースは買えたかい?」
「買えたぞ。白蘭が助けてくれたのだ!」
 空幻と呼ばれたその小さな幻騎士は、ににさま──恐らく兄である幻騎士と笑い合っている。
 そこへ。

「アンタたちおっそい! おつかいだけで何時間かけてんのよ!」

 γと白蘭が目を向けた先には。
 白い肌に黒い髪と、小さな眉。切長の目元には月の瞳。
 やや丸みを帯びた体つきを除けば、こちらも間違いなく幻騎士だった。

「幻騎士……?」
「いっぱいいるねぇ、幻チャン」

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