第2話 きょうだい

 

 白蘭が立ち上がらないので、γたちも席を立てない。いい加減戻らなければ、あの心優しいボスは遅くなるほどに心配するだろう。
「おい、白……」
「いやー、こんな偶然ってあるんだねー」
 白蘭は残っていたメロンソーダをズズーっと音を立てて飲み干し、そう呟いた。
 γの眉尻がぴくりと跳ね上がる。
「ってことは、やっぱり……!」
「幻チャンだよ。ボクが見間違えるもんか」
 自信満々に答えながら、白蘭は黒い革財布を取り出した。……まさか。
「スったのか?」
「うん」白蘭は悪びれもなく答える。「だって、γクンもまだ話し足りないでしょ?」
 γは反論しなかった。白蘭の目に狂いがないというのなら、その通りだ。未来での裏切りを清算させる。それがこの世界の筋というものだ。
「いや、でも兄貴。結局誰が幻騎士だったんだ……?」
「……」
 γには答えきれない。いや、直感は「幻海=幻騎士」だと告げているのだが、そう断定して本人に突きつけるだけの根拠がない。これではいくらでも言い逃れできる。
「難しいこと考えてる? もっとシンプルに、再会を喜ぼうよ?」
 白蘭の間延びした声は、もちろん無視した。

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