第1話 再会

 

 奇妙だけれど不思議な町だと思う。
 すべてを許して受け止めてくれるような、そんな器の大きな町。
 まあ、未来のボクはこの町を戦場として選んだんだけど。いい町だなぁと、今になってなんとなく思った。
 買い出しについて行くと言ったのに、ユニもそれを喜んでくれたのに、γはなかば撒くように消えてしまった。本気を出せば探せないこともないが、自分の体調と相手の機嫌を同時に損なうだけの不毛な行為でしかないので、彼が思い至らないであろう子ども用の嗜好品を探して町を歩く。今のミルフィオーレには年少者が多いから無駄になることはないだろう。
 
「そこな白髪のお人、少し助けてはいただけないのだ?」
 
 上着の裾を控えめに引っ張る小さな手に気づいて、白蘭は足を止める。
「あの一番上の、オレンジ100パーセントのボタンを押して欲しいのだ」
 道端の自販機の列を必死に指差して、その子は困ったように小さな黒い眉を寄せていた。
 お安い御用だ。白蘭は人差し指でボタンを押す。隣の赤いラベルの炭酸飲料を押してみようかと意地悪を思いついてやめたのは、彼が冗談を理解してくれるか怪しかったからだ。泣き出されでもしたら対応できない。
「ありがとうなのだ!」
「どういたしまして。ところで君…… 名前、教えてくれる?」
 知っていると思ったのに、その子は白蘭が思っていたのとちょっと違う名を名乗った。
 
 白い肌と黒い髪、そして黒い装束。
 切長だけれど大きな丸い月色の瞳は、間違いなく、未来で自分が殺した「幻騎士」のものだったのに。

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